不動産業界の2020年問題とは~オリンピック後に考えられるリスクをプロが解説

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不動産業界の2020年問題を専門家が徹底解説!

2020年といえば東京オリンピックが開催される年です。

現在、首都圏では分譲マンションの新築工事が続いており、海外の投資家を中心にマンションが大量に売れています。
その結果、マンションの売買価格がこれまでにない高騰を続けているのです。

しかし、東京オリンピックが終わると同時に大量の売りが殺到し、マンションの価格が大きく下落するという見方があります。
ここで不動産業界の2020年問題を検証していきましょう。

不動産業界の2020年問題その1-都市部の世帯数減少

日本の人口が減り始めているのは周知のとおり。

国立社会保障・人口問題研究所が平成29年に行った調査では、2020年を境に世帯数も減少すると予測されています。

人口推計の出発点である平成27(2015)年の日本の総人口は同年の国勢調査によれば1億2,709万人であった。出生中位推計の結果に基づけば、この総人口は、以後長期の人口減少過程に入る。

平成52(2040)年の1億1,092万人を経て、平成65(2053)年には1億人を割って9,924万人となり、平成77(2065)年には8,808万人になるものと推計される。
出典:日本の将来推計人口|国立社会保障・人口問題研究所

また、首都圏においても2020年を境に世帯数が頭打ちとなり、減少に転じていくことが予想されます。
特にマンションの主な購買層にあたる夫婦と子供の世帯は、すでに減少をはじめておりこれは東京でも例外ではなくなってきます。

このまま世帯数の減少が続けば、住宅市場の拡大は続かずマンションが売れ残り、価格が下落するでしょう。

不動産業界の2020年問題その2-海外投資家のマンション売却

現在のマンション価格の高騰は、海外投資家が支えているといっても過言ではありません。
しかし、投資目的で大量にマンションを購入した投資家が、東京オリンピックの終了を期に売却をはじめるという見方があります。

これには根拠があり、東京オリンピック開催が決まった2013年から2014年にかけてマンションへの投資がはじまっており、売却するタイミングとして2020年が一番売りやすい状況にあるからです。

マンションを売却した際に譲渡所得税が発生しますが、売るタイミングによって税金の額が違ってきます。
不動産の所有期間が5年以下の場合は短期譲渡所得になり、所得税30.63%、住民税9%がかかってきます。

それに対し所有期間が5年を超える場合は、長期譲渡所得となり、所得税15.315%、住民税5%とかなり安くなります。

このことから所有期間が5年を超える2020年に一斉に売却をはじめるのはないか、と言われているのです。

もし東京オリンピック終了後、市場に大量の中古マンションが出回れば、マンションの価格は下落します。
これが2020年問題の1つだと言われています。

不動産業界の2020年問題その3-過剰なマンション建設


都心では海外の投資家や一部の富裕層が、資産運用や相続税対策の目的でマンションを購入していました。

これがもとでマンションの価格高騰が起こった訳ですが、すでにマンションの供給が過剰になっており、新築マンションでも売れ残りが発生しています。
新築マンションは完成前に全て売り切るのが基本ですが、完成しても売れ残る部屋があるため、販売を続けているのが現状です。

ここまで高値になってしまったマンションに、富裕層や海外投資家が敬遠をしはじめ、一般のサラリーマンには手の届かない価格になってしまいました。
結果的に新築マンションでも価格を値下げせざるを得ず、マンション価格の下落がより一層進む可能性があります。

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2020年の東京オリンピック終了と同時に、更にマンション価格の下落に拍車がかかるのか懸念されています。

不動産業界の2020年問題その4-失業者の増加


2020年になると団塊ジュニアの世代が45歳から54歳を迎えることになり、企業雇用者の6割から7割を占めることになります。

内閣府が報告している高齢化の状況では下記のように現状と今後の予想がされています。

高齢者人口は、「団塊の世代」が65歳以上となった平成27(2015)年に3,392万人となり、「団塊の世代」が75歳以上となる37(2025)年には3,657万人に達すると見込まれている。その後も高齢者人口は増加を続け、54(2042)年に3,878万人でピークを迎え、その後は減少に転じると推計されている。

総人口が減少する中で高齢者が増加することにより高齢化率は上昇を続け、47(2035)年に33.4%で3人に1人となる。54(2042)年以降は高齢者人口が減少に転じても65歳到達者数が出生数を上回ることから高齢化率は上昇を続け、72(2060)年には39.9%に達して、国民の約2.5人に1人が65歳以上の高齢者となる社会が到来すると推計されている。

出典:高齢化の状況|内閣府

このことから賃金の上昇がピークを迎え、経営を圧迫することから、所得があがらなくなる可能性があります。
また、グローバル化に伴う外国人労働者の雇用や、AIの発達により仕事がなくなる可能性もあります。

それ以外にも若者の非正規社員が増えており、正社員の場合でも管理職を団塊ジュニアの世代が占めることによりポストが不足し、若者が働きにくい環境がうまれ、転職を余儀なくされるケースが増えています。

現在は東京オリンピック関連の事業が最盛期で、仕事が溢れている状態ですが、オリンピックの終了と同時に仕事がなくなり、失業者が増える恐れもあります。

こういった将来の悲観的な見通しから、若者が不動産の購入を控え、在庫がどんどん膨らんでいきます。
その結果、価格の下落が引き起こされる可能性があります。

不動産業界の2020年問題その5-既存マンションの空室増加


新築マンションの売れ残りと同時に懸念されているのが、既存マンションの老朽化と住民の高齢化、空室の増加です。

人口の多い団塊の世代が70代を迎えるのがちょうど2020年頃。
マンションの住民の高齢化も避けて通ることができない問題になっています。

もし住民の高齢化が進めば、役員のなり手不足から管理組合の機能不全が起こり、マンションの老朽化が急速に進む恐れがあります。
また、年金生活で暮らしている高齢者が、管理費や修繕積立金が支払えず、滞納をするケースが全国的に目立ってきています。

その他にも空室率の増加により、マンションの大規模修繕に必要な積立金が集まらず、問題が起こっても修理を先送りする事例まであります。

こうなればマンションの資産価値は一気に落ち、退去する住民も現れ、マンションがスラム化する恐れがあります。

不動産業界の2020年問題その6-空き家の増加

総務省の「住宅・土地統計調査」によると、平成25年の日本全体の空き家数は820万戸、総住宅数は6063万戸で空き家率(空き家に占める割合)は13.5%にもなっています。
東京都の空き家は11.1%で全国的に見ると低い数字ですが、地方と比べても大きな差はありません。

総住宅数は6063万戸と,5年前に比べ,305万戸(5.3%)増加
空き家数は820万戸と,5年前に比べ,63万戸(8.3%)増加

空き家率(総住宅数に占める割合)は,13.5%と0.4ポイント上昇し,過去最高
別荘等の二次的住宅数は41万戸。二次的住宅を除く空き家率は12.8%
出典:平成25年住宅・土地統計調査(速報集計)結果の要約|総務省統計局

今後日本では、団塊の世代が続々と後期高齢者になり、家を所有している高齢者の相続問題が表面化してきます。

親が都心から離れた場所に住んでいる場合、子供はわざわざ郊外に移り住むことは考えにくく、空き家として放置する可能性が高くなります。

2015年に「空家等対策の推進に関する特別措置法」が施行され、放置している空き家に対する監視、指導が厳しくなりました。
特定空き家に指定されると、固定資産税の軽減処置が除外され支払う税金が高くなり、場合によっては空き家を強制撤去させられます。

住宅を売却できれば良いですが、買い手のつかない住宅はそのまま放置すると建物の老朽化がすすむため、賃貸に出すなどの対策が必要になります。

そこで空き家を外国人労働者に貸し出すケースが増えると予想されます。
近年、訪日外国人が増え続けており、日本に興味を持ち日本に住み始めれば、人手不足で困っている業界は、外国人労働者を積極的に雇用し始めるでしょう。

空き家対策として「民泊」で貸し出すことも考えられます。

この際に多少の問題に目をつむり、不法労働者や不法滞在の外国人に住宅を貸し出してしまうと、地域の治安の悪化やコミュニティの崩壊が懸念される事態になります。

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不動産業界の2020年問題その7-金利の上昇


2016年に日本銀行が「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」を導入しました。
これにより住宅ローンの借り入れがしやすくなり、不動産の購買意欲を高める要因にもなりました。

しかし、このマイナス金利がいつまでつづくのか、先行きは不透明です。
マイナス金利の影響で銀行の収益が悪化しており、特に地方の銀行は存続の問題にまで発展しています。

東京オリンピックを期に景気の回復が見込まれれば、一気に金利の上昇がはじまる可能性があります。
もし金利が上昇すれば、不動産の融資を受けにくくなり、不動産の売れ行きにも影響がでることは必至です。

不動産業界の2020年問題その8-住宅にもある2020年問題


実は住宅の建設の際にも2020年問題があるのをご存知でしょうか。

2017年4月に「改正建築物省エネ法」により、住宅の省エネルギー性能の最低限度基準を定める法律が施行されました。

これまで日本の住宅には、省エネの最低基準がなく、例え断熱をしていない住宅でも建てることができました。
欧米ではかなり以前から住宅の省エネに対する取り組みがなされており、先進国の中で日本だけが遅れをとってきました。

省エネ基準が設けられた背景には、2011年に発生した東日本大震災が深く関係しています。
震災により日本中の原発の稼働が停止し、火力発電などのエネルギーに依存することになりました。

しかし、地球温暖化の取り組みからCO2の排出を抑えるためにも、石油や石炭燃料への依存度を下げる必要がある上に、代替えとなる自然エネルギーへの転換も容易ではありません。

様々な分野での省エネ対策が求められる中で、住宅も例外ではありませんでした。

すでに300㎡を超える建築物を建てる場合には、省エネ措置の届け出義務がありますが、法改正により2020年までには全ての建築物について、省エネ基準への適合が義務化されます。

つまり2020年以降は次世代省エネルギーの基準を超える建物でなければ、建築することができないという訳です。
さらに2030年にはゼロエネルギーハウス(ZEH)の実現を目指すことになります。

ここで問題になるのが、現在建築中の住宅が省エネ基準に適合しない建物であった場合です。

昭和56年に耐震基準が改正されましたが、この耐震基準をクリアしているかどうかで、建物の資産価値が大きく違ってきます。

現在では「旧耐震」「新耐震」という呼び方をしますが、旧耐震であった場合は「既存不適格」という扱いになります。つまり現在の耐震基準に適合していない建物という意味です。

旧耐震の建物は新耐震に比べて、資産価値に大きな差が出ることになり、売却査定をする際に住宅の価値がゼロと判断されてしまいます。

このことから、2020年以降の省エネ基準に適合した住宅と、そうでない住宅であった場合、資産価値に大きな差ができるのは明白です。

現在、省エネ基準をクリアした住宅は「長期優良住宅」に認定され、減税、補助金など様々な優遇措置が設けられていることからも、いかに重要視されているかが分かると思います。

長期優良住宅については下記の記事で詳しく解説をしています。

関連記事⇒長期優良住宅とは~補助金の申請方法や基準とメリットを分かりやすく解説

これから住宅を建てる際には、2020年に省エネ基準への適合が義務化されることを、きちんと認識する必要があります。
もし、省エネを考えずに住宅を建てれば、2020年以降に資産価値が一気に下がる恐れがありますので注意が必要です。

省エネ住宅に関しては下記の記事で詳しく解説をしています。

関連記事⇒省エネ住宅とは~不動産のプロが計算方法や制度の仕組みについて解説

不動産業界の2020年問題まとめ


随分と悲観的な内容の記事になりましたが、2020年に急激にマンション価格が下落することは考えにくい状況です。

東京では2025年頃まで大規模な再開発計画が予定されていますので、景気が急激に悪化する可能性は低いからです。

ただ、新築マンションの供給はあきらかに過剰になっており、東京オリンピック終了後に大量の中古マンションが市場に供給され、徐々にマンション価格の値下がりがはじまる可能性は大いにあります。

2019年に消費税の増税が予定されていますが、新築マンションの場合は住宅ローン減税やすまい給付金などの税負担を軽くする制度が継続される予定。
中古マンションは個人が売主の場合、本体価格に消費税がかからないため、影響は少ないと見て良いでしょう。

むしろ、既存中古マンションの老朽化や管理費、修繕積立金の滞納といった問題の方が深刻で、高齢者が増えたマンションのスラム化が一番の懸念材料になっています。

今後も2020年までの不動産市場の動向を、注意深く見守っていく必要があるでしょう。

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